第10話 ニッカポッカのお兄さん

大猛暑の前兆、今年4月2日。もう一週間で小学校に入学する6才児達の動きは、実に活発だ。
大きな運動グラウンドの横に細長く、狭く、小さな児童公園があり、4年前から毎週金曜日は午後3時30分から街頭紙芝居実演場所になっているのだ。
いつもの通り、拍子木で街中路地を15分間案内して廻り、お菓子を水アメ中心に売るのですが、すでに幼児達7~8人が一列に並んで順番待ちをしていた。
そんな時、ファーッと幼児達を包み込む様な気配りをして、ニッカーズボンの兄チャンが風の様に靜に並んだ。
こんな雰囲気は、かつて街頭紙芝居を体験している感覚なのだ。
お菓子をつくりながら、チラッと横目で見ると、21~22才位の小柄だがガッチリとした兄チャンだ。

前に並ぶ幼児をかばうような仕草をしながら、買う順番が来て、俺の正面に現れた。
注文のウサギセンベイをつくりながら、

「兄ちゃん、何才や」

と話しかけると、サラッと18才やと言う。

ええ…?思わずお菓子づくりの手を止めて、相手の顔を見直した。
「22~23才だと思ったんだが、君、高校どないしたんや?」

「おもろないから、一年で中退や。」

「それで今、仕事してるんか?」

「大工さんの弟子になってるんや」

小柄ながら、実に堂々として、落ち着いたオーラのある返事だ。
自分の思い全開で一生懸命に仕事に熱中している、理想の青年に久し振り出会った。
勿論、小中学校時代、我が街頭紙芝居を見て成長した青年なのだ。

いつも中学生のヤンチャ者には、(今でも同じだが)どれだけ努力しても、やる気が生まれないなら、学校なんて止めろ。
ダラダラと不登校なんて、卑怯者だ!その代わり、どんな仕事でもして、自分の飯は自分で稼いで生活しろ!

手に負えないヤンチャ中学生達に、街頭で吠えまくってきた俺の言葉を実行したそうだ。

Comments are closed.