第11話 100円玉を持った4才女児

丸顔で大きな目玉に、真っ黒な瞳、ころんころに太った女の児だ。
いつもこの広場での街頭紙芝居の実演は、午後5時には終了していて、お菓子売りの時間帯となり、7~8人の幼児達が行列をつくっている時だ。

行列をくぐり抜けて、いきなり
「オッチャン!」
と叫ぶと当時に、前から全力で太ももに飛びついて来る。
2~3秒しがみついてから、ぱっと飛び降りると、30m位離れた場所にある幼児用のブランコに向かって突進して行く。
本当にエネルギーの固まりだ。
ブランコで2~3分一人遊びをすると、又パッと飛び降り、50m先にある高学年用のブランコに突進していく。
そのブランコに飛び乗ると、一人で漕ぎ出す。
5分位漕いでいたかと思うと、パッと飛び降り、小枝を拾って、地面に何か書きはじめる。

やがて飽きると、中腰のまま、小枝で20m位線を引いて、紙芝居舞台の俺の方に近づいて来ると、やがて小枝を投げ捨て、全力疾走で再び俺の太ももに飛びついて来る。

太ももを下りると小さな手でズボンのポケットをぎこちない手つきでまさぐり続ける。

「オッチャン!!。ウサギアメ」
と言いながら、サッと右手を突き出す。
50円玉のおつりを渡すと、ズボンのポケットに入れるのに戸惑いながら、ようやく入れると、ニコッと笑って大きな目玉で俺の顔を見上げ続け、お菓子づくりを待つ。

お菓子を手渡すと、又も急発進だ。
公園の中央を目指して駆けて行く。5分も過ぎると食べ終わり、又も飛び込んで来て、残りの50円玉を握りしめて、俺の目の前に突き出す。
お菓子を渡すと、サット身をひるがえして、又も公園の中央に突進して行く。

そんな間、お母さんは、無干渉で公園内では、絶対放任なのだ。
30分位、公園で一人遊びをして、5時30分には、お母さんと帰って行く。
帰りには、わざわざ俺のそばに来て、小さな手を力一杯に振りながら、別れの挨拶をして帰って行く。

もう半年間もこのパターンが続いていて、年齢を超えた友情の糸につながれている。

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