第22話 中学女教師の教育魂

平成11年の4月1人の中学女教師が我が家に訪ねて来られた。
我が地元、大阪市北区の中学3年生の保育授業に紙芝居を制作し、幼稚園で実演させ、中学3年卒業の想い出をつくってやりたいとの説明と協力依頼である。

当時、地元中心に毎日、2~3ヶ所、街頭紙芝居20年のキャリア(今、現在では継続30年目だ)で、大半の生徒達は、幼児の時から出会っているので、よろこんで引き受けた。

その後、しばらく、連絡もないまま梅雨の終わった7月中頃、やっと先生が来宅され、紙芝居の台紙について尋ねて来られた。
ボード紙の使用を進言した。

小柄で可愛いメガネをかけたこの先生は、以前、家内が白血病で入院していた時に、他の病気で入院されていて、地元の中学校に勤務されていた関係もあり、知り合いとなったのである。

8月に入って、又来宅され、生徒達の取り組みを時間がある限り観に来て欲しいとの要望なのである。
行って見て驚いた。

7~8人を1つのグループとして、4つのグループを作り、各グループごとに自主的にディスカッションをし、その発案の中で、各グループごとの全員でそれぞれのストーリーを決め、絵を制作し、年末までに完成させて行くことになっていた。
そして、年明けの2月頃には、地元幼稚園3園で、各4組の紙芝居絵が各グループごと独自のやり方で、園児達に観てもらうことになっていた。

教育は、ヒラメキ、すなわち感性力だと感じていた私は、この女教師のヒラメキと直ぐに実行に移し、継続させて行く姿に、何か「捨て身」の悲壮感さえ覚えた。
しかし、御本人は実に淡々として居られた。
先生!良くぞここまでまとめられましたねぇ
と声をかけると、
いや、大変だったんです。
と、実にあっさりと一言のみ

何が大変だったのですか?
と尋ねると、
各組が何をどうしらら良いのか、紙芝居の制作は分かるのだが、その入り口が何もヒラメイて来ない。
従って、グループ全体が行動が起こせないので時間だけが過ぎていく。
先生はその間、問われない限りはアドバイスはしない。
各グループが命がけで考えると、必ず知恵が生まれと信じていたのだと。

スタートから2~3ヶ月も過ぎて、1つのグループの中から、声高の女生徒の発言者が生まれ、「今ヒラメイタことから直ぐ実行するんだ」との大声が、そのグループを元気づかせ、そのエネルギーが他のグループへと伝わって行ったそうだ。
その間、先生は黙って生徒達の変化を待ち続けたとのことだ。

それにしても、その忍耐力と気力に感服した。
教育とは、今、己のやりたいものを感じ、発見し、それを徹底的にやらせることが基本だと信じている私は、先生との共感がふくれ上がった。
教科書通り、機械的に授業を続けるだけでは、生徒は夢も持てず、能力も開花しない。
生徒本人の予想もしない能力と行動を引き出させるのが本来の教育なのではないか。
決められた通りに授業を進めるだけならば、ロボット教師を制作し、先生の代役をさせれば良いのだ。

先生のヒラメキ、すなわち感性を武器に、知恵を使わせ、子供達に未知への挑戦のたのしさに気付かせる。こんな授業方式が大切ではないか。

8ヶ月に渡る紙芝居制作に苦しんだ生徒達に、いよいよ卒業の3月、目標の幼稚園実演の本番がやってきた。
前日、校庭で夜8時まで実演の練習をしたグループもあり、不安と期待を胸に、3つの幼稚園を4つのグループがそれぞれの思いを秘して、実演して廻った。

園児達と一体になった各グループの中学生達に、園児達からお変えしのお踊りや太鼓が披露され、大感激のフィナーレとなった。
次なる写真と、生徒、先生の感想文がその証なのである。

教育関係者の皆さん。是非感想を聞かせて下されば幸甚です。

FAX 06-6353-2957

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