第23話 プロ街頭紙芝居師として年末を迎える

 私は近年、1年の終わりは11月までと感じる様になり、意識が変化して来て、12月は1年間の「おまけ月」だと考えています。
 すると不思議なことに、毎年12月を迎えるのが楽しさを含んだ何となくゆったりとした気分が生まれて来ています。
 さて、30年間、降雨以外は毎日、街頭広場で紙芝居を実演して来ましたが、今年の寒暖の変化の大きさには驚かされました。1日の間に10℃以上の温度変化が生まれますと、体調維持が大変で、肉体感性が弱って来ます。
 街頭紙芝居歴30年を振り返れば、毎年600回以上、多忙な年には1000回以上も街頭で実演して来ました。今では、親子二世代目、三世代目の子供達とのコミュニケーションが生まれていて、実に楽しい雰囲気が、かもし出されて来ています。
 長年続けて来た私への勲章でしょう。
 時には、世界で唯一人のプロ街頭紙芝居師だと過分の評価を下さる方も居られますが、わがままにも、世間の反対を押し切って、生活をかけた職業として自ら選び決断し、突き進んで来た道なのですから、どんなに苦しいことが起きても、いつの間にか乗り越えて来ているのです。
 その根源は、一瞬なりとも忘れることのない、生活を懸けて取り組むひたむきな一所懸命さが土台となっていたからでしょう。
 感性論哲学の創始者吉村思風先生は、「人間らしい本物の人間になる為の働き方」について述べられています。

 先ずプロとしての職業を持て!
 プロとは何か、それは生活をかけ、命をかけ、人生をかけて働くことだと。
 21世紀という時代は、生活を懸けて一所懸命働くことで、必ず生じる修羅場の現実。それに揉まれながら人間性が磨かれ、本物の人間になる道が開かれて来ると。
 そして、21世紀は、人間性の陶冶(トウヤ)と金儲けを一石二鳥で同時にやってしまう凄い時代だと述べられています。

 かえりみれば、昭和30年代5万人も居られたプロ街頭紙芝居師さんの皆様は、その後の高度成長期に、金儲けの良い仕事が増えて来てるので、次々に廃業・転職されて行かれた。
 楽しみにしていた多くの子供達のかなしみの山を築いて行かれたのです。
 私が紙芝居をやり出した昭和48年には、全国でプロ街頭紙芝居師はわずか30人位に激減していました。
 いかに少人数でも、続けて居られる人がいると言う事は、生活が出来ると言う事です。世間の色々な雑音に逆らい、自分で決断し、妻子を養い生活が出来ると信じ、プロ街頭紙芝居に突進して行きました。
 どんな仕事でも生活を懸けた仕事には、チャランポランなものはありません。必死な思いで、潜在意識に訴え続けました。ジタバタとあがき、もがき、四苦八苦の修羅場の体験の中から天分への確信が生まれて来たのです。
 それがやがて、紙芝居200年への歴史観と、人生を懸けたプロ街頭紙芝居師の役割りと、社会性が顕現して使命感が湧き上がって来たのです。と同時にプロ街頭紙芝居道を極めよ!と強烈な欲求が感性から突き上げて来たのです。

 この境地から今、一般世間で行われている紙芝居を観てみますと、1ヶ月に1~2回、1年に3~4回位しかやらない人々が多く、そこにはどんな価値と意味があるのか疑問です。
 唯、漠然と、気まぐれに、下手で無責任な絵を持って紙芝居だと宣伝しているだけのものが多い様です。
 現在の紙芝居の流れを仕分けして思いますと、
 イ)趣味と自己満足でやっている人
 ロ)売名目的でやっている人
 ハ)己の商売PRで目的でやっている人
 ニ)小金稼ぎの手段としてやっている人
 其の他色々とありますが、いずれにしても生活を懸けた一所懸命さがなく、一を持って之(これ)をつらぬく根性も責任感もなんものばかりですから、人間性が磨かれるはずもないから、少し困難が発生すると挫折し、長続きはしないのです。
 やりたい事をやれるのが人間の幸の原点ですが、チャランポラン意識での取り組みでは、直ぐに子供達が見破り、再参加はしなくなり、消えて行く運命が生まれるだけです。

 今や世界的な景気の低迷と混乱期に突入して来ました。
 日本でも昨今不況感が街中に拡大し、子供達のお小遣いまでも減りつつあります。プロ街頭紙芝居師さんの収入の主流は、50円、100円の水アメが中心のお菓子販売です。しかし、街頭紙芝居師さん達の一所懸命さと命がけの努力は、必ず潜在能力を開花させ、子供達を呼び込んでくれるはずです。
 21世紀が進展して行きますと、人間同士の交わり方としてコミュニケーション要求が倍増して来るでしょう。
 その様な時代が来ると、相手の意見を押さえ込み論破する説得の論理が嫌われ、その反動として、相手の意見も取り入れ修正しながら、共に交わって行く納得の論理が主流となって来るはずです。
 説得の論理は、人間同士のコミュニケーション力にはなりません。

 プロ街頭紙芝居師は、趣味や遊びで行うものでなく、毎日、毎日の街頭実演は生活の確立を模索しながら実は人間同士間のコミュニケーション進化と活性化を求めあっているエネルギーです。だからこそ、街頭紙芝居には、職業として生活をかけ、命をかけ、人格を磨く意識の強靱さが求められる訳です。

 どうしようもない困難が発生したら、「プロ街頭紙芝居は、毎日が真剣勝負だ!!」と絶叫して下さい。
 そして、これからも生じてくる修羅場の環境の中で、俺はこのプロ街頭紙芝居の仕事を復活し、進化させる為に生まれて来たのだ、俺はこのプロ街頭紙芝居の為なら死んでも良いと強く思いましょう。
 すると、社会意識、宇宙意識が湧き出て来ると同時に、問題解決の知恵が潜在能力から湧き上がって来ます。
 その時「ありがとう。ありがとう。」と100回唱えましょう。
 感謝心が湧き上がり、使命感につながり、やがてプロ街頭紙芝居道の確立へつながると確信して居ります。

 プロ街頭紙芝居師を志す皆さん!。かつて戦国武将山中鹿之助は、主家再興の為、月に向かって「我に七難八苦を与えたまえ。」と祈りました。
 いかなる艱難辛苦も我が夢実現の御馳走と考え、慌てず騒がず年末を坦々として走破して下さい。

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